祖母力
祖母井秀隆。ジェフの元GMにしてオシムをジェフに招聘してきた男。オシムの代表監督就任と前後して、フランス2部リーグ、グルノーブルのGMとして渡仏した。ジェフ時代、オシムだけでなく、ザムフィールやベルデニックなど一貫して欧米の監督を招聘するとともに、阿部や山岸、佐藤勇人等をジェフユースから育て上げ、オシムともどもジェフ再興の貢献者と言える。
その名前はもちろん知っていたが、ジェフのGMになるまでの経歴は知らなかった。「オシムが心酔した男の行動哲学」というサブタイトルが付けられているが、内容は祖母井氏の自伝と言っていい。祖母井の後輩でジェフ時代のGM補佐を務めた辰巳直祐が企画監修、各章の間に関係者のインタビュー記事も挟まれた企画本である。こうした本の場合、どこまで祖母井氏自身が筆を執っているのか知らないが、年少期から現在に至るまで、非常にわかりやすく書かれており、氏の半生を十全に伺い知ることができる。加えて、オシム代表就任前後の状況や脳梗塞で倒れた時の状況なども正直に書かれており興味深い。
祖母井氏自身は本書で何度も書かれているとおり規格外の人間であると思う。ここまでの行動力を持つ人物はなかなかいない。古河工業や川淵キャプテンを中心とする旧態然とした日本サッカー界の現状も書かれているだけに、いつか氏に日本サッカー協会の仕事に関わってもらい、この鬱屈した空気を吹き払ってもらいたいという思いを強くする。しかしその前に氏にはグルノーブルでの仕事が待っている。まずはそこで精一杯頑張ってほしい。そして、同じグルノーブルへ移籍した伊藤翔も大きく羽ばたかせてほしい。
●人と人をつなぐ役割、人間的な営みを思い起こさせる祖母という存在。利己的で独善的な競争社会であるからこそ、僕はこの祖母の復権が今こそ見直されるべきだと考えるのです。(P9)
●ただ、僕が彼に期待したのは勝敗だけの結果ではありません。どうしても「勝利を求めずに勝利する」オシムのサッカーが日本に欲しかったのです。(P31)
●与えられた仕事は手を抜かずにやり遂げる。そして、それは誰かがきっと評価してくれるー。日本もドイツも、おそらくどこの国でも、それだけは共通している。サッカーも同じだと思いました。(P88)
●「ホームゲームは14日に1回しか開催されない。そのうち1日はサポーターが試合に見に来てくれなければならない。残りの13日は我々がサポーターにお礼をする」(P112)前グランパス監督・セフ・フェルフォーセンの言葉
●僕も、今回の代表監督決定までのプロセスについては、一貫して不信感を持っていましたから、答えは決まっていました。「川淵さんとは仕事がしたくないのです」僕は旗幟を鮮明にするため、あえて明言しました。(P175)
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