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2008年10月17日 (金)

公営住宅と貧困系ニート

 先日、子供の権利条約等の活動をしているNPOの方から、公営住宅における子供の実態について話を聞く機会があった。非常に衝撃的な話で、公営住宅のあり方を考えるにあたり、無視できない内容だったので、ここに概要を紹介しようと思う。
 まず驚いたのは子供たちの実態。下の子供の面倒を見るために、学校へ通えない小学生。いつの間にか母親が帰ってこなくなりコンビニのバイトで生活を続ける高校生。夜の仕事をする母親と深夜まで団地で遊び惚ける子供たち。それでも義務教育のうちは学校も気にしているが、中学校を卒業すると誰の目も届かず、就職もできずに昼間からたむろするニートたち。報告者は、彼らのことを「貧困系ニート」と呼び、「引きこもり系ニートに対する施策は始められつつあるが、貧困系ニートには一切手が差し伸べられていない」と訴えた。
 この団地は昭和40年代に建設された1000戸以上の大規模団地で、実にその1/4が母子家庭。他に1割程度の外国人世帯もおり、現代の社会の歪み、格差が集約されたような状況だ。団地の自治会は残りの高齢者によって担われ、かつては盛んだった行事も今は夏の盆踊り大会程度しか行われていない。県営住宅、市営住宅の世帯がほとんどを占める小学校区は学級崩壊も著しいようだ。代々母子家庭で住み続けている家庭もあるなど、困窮が困窮を生む負の連鎖が続いている。
 学校の先生、児童委員、保健所、区役所など、それぞれの担当者へのヒアリングも行っているが、みんなが状況に対して危惧するものの、本来業務の多忙もあり、十分な手を差し伸べることができないジレンマ。近所のコンビニでは団地の子供たちをバイトに雇い、「朝からふき溜まる子供たちになるべく声をかけるようにしている」と言うが、地域の力にも限りがある。
 「彼らが暴走族などになるのですか」という質問に対して、「彼らにはバイクを買うようなお金もない」とか、「暴力団が目を付けるのか」に対して「最近の暴力団はワガママなので、それほど面倒見がよくはない」など、やや滑稽なやりとりもあったが、結局誰からも見捨てられた彼らは、同じ境遇の他団地の子供たちとつるんで、万引きや恐喝を繰り返すしか生きる方法を知らない。「団地の中で就労支援」とか「信頼できる大人が対応する子供の居場所づくり」といったとりあえずの提案はされ、実際既にこのNPOでは、一昨年から子供の居場所の運営実験を始め、現在は月1回の移動児童館や無料で勉強を教える「無料塾」を開設しているが、始めの一歩に過ぎない。
 低所得者ばかりを集める公営住宅の制度的欠陥や福祉施策と連携した住宅供給の必要性の指摘というあたりが、住宅問題の専門家としては第三者的にはまっとうな対応かもしれないが、現実の制度の前では空しい。公営住宅の応募倍率が10倍を超える中で、生活困窮者はこの数倍もいると思われるが、公営住宅団地に集中させたからこうした問題が起きているのか、集中しているから問題が「見える」のか、その実態も解明されているわけではない。もちろん全ての公営住宅で起きているわけではなく、一部の特別な団地の問題だという指摘も多分正しいのだと思う。
 いずれにせよ、今回の話は、もちろん無力感も感じるのだが、頭の片隅から離れない非常に衝撃的な報告だった。

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