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2008年12月18日 (木)

住宅200811

 (社)日本住宅協会が発行する「住宅」という機関誌がある。この11月号は、「特集/まちなか居住」として、弘前大学の北原教授の「まちなか居住の課題と展望」と題する論文を筆頭に、国土交通省市街地建築課による「街なか居住施策の概要」や国土交通政策研究所の古本氏・山本氏による「高齢者の街かな居住に関する研究報告」、富山市、金沢市、福井市、飯田市及び高松市でのまちなか居住施策の紹介が掲載され、なかなか読み応えがあった。また、ホームレス支援とハウジングに関する調査と実践報告が2編載せられており、これらも興味深かった。
 まず、特集のまちなか居住である。北原先生からは、「まちなか居住」施策が中心市街地活性化策の亜流として登場してきた経緯を述べた上で、まちなかの住環境やライフスタイルについて、本当の意味での検証がなされてきたのかと課題を突きつけている。「高齢者の利便性を全面に押し出すことで、『住みやすさ』の本質を矮小化している」(P4)という指摘は手厳しい。続く国土交通省市街地建築課の説明の中で、「徒歩や公共交通が主な交通手段である高齢者にとって」という表現が出てきて、思わず心の中で「どんだけーっ」と叫んでしまった。
 さらに北原先生は、まちなか居住を進めた結果生じる郊外住宅地の空洞化についても、同一視野の中で課題として取り上げている。結論として、これらの課題を解決していくためには、持家信仰や賃貸市場への偏見、住み替えライフスタイルの勧めなど、日本人の居住観の根底からのシフトが必要であると指摘している。
 その是非に対する批評は置くにしても、「まちなか居住」礼賛一辺倒の風潮に対して、立ち止まって考える必要を指摘した意義は大きいと思う。
 もう一つ、ホームレス関係の記事が興味深い。国立保健医療科学院の板東氏による「住宅政策と福祉政策の連携」と題する調査報告は、住宅セーフティネットの対象者として、ホームレス・生活保護世帯の居住実態を報告するとともに、住宅施策における低所得者対策が公営住宅やあんしん賃貸支援事業等だけでは全く不十分なことを指摘している。その上で、生活支援の必要性や居住歴を踏まえた新しい居住水準の提案、生活保護制度等と連携した住宅施策の見直しを提言している。拝聴に値する。
 また、さいたま市を拠点に、ホームレスや生活困窮者の支援をしている特定非営利活動法人ほっとポットの藤田代表の投稿は、地域の空き家を活用したホームレス支援事業「地域生活サポートホーム」の報告をしており興味深い。下記で引用した「ハウスレス」と「ホームレス」の解釈は、この記事中で引用している北九州市でホームレス支援を行う奥田氏の著書からのまた引用であるが、住宅だけでなくいかに生活支援が重要かを物語っている。
 こうした体制をいかにして整えることができるか。今、図らずも「離職退去者」(非正規雇用者等で解雇等により住宅を失う人たちをこう呼ぶそうです)をいかに救済するかが問題になっているが、その延長線上には、ホームレスや生活困窮者の居住対策をいかに構築するかという問題が横たわっている。それを構想するための重要な手掛かりの一つと言える。

●弘前市のスーパーマーケットの跡地に建てられたマンションを見て、単純に疑問を抱いた。「ここに住む人は、どこで肉や野菜を買っているんだろう。」まちなかのライフスタイル提案を伴う形で「まちなか居住」の器が用意されていかなければ、それは単に居住空間のまちなかにおける拡散でしかないのである。(P4)
●これまで我が国が全く経験してこなかった、核家族時代の住宅地の持続性という問題が、「まちなか居住」の進展とともに、次第にシビアに顕在化しつつある。(P5)
●「まちなか居住」は住宅政策で片づけられる代物ではない。都市全体をマネジメントする発想で、まちなかと郊外を視野に入れた政策が、今こそ必要となってきているのである。
●生活保護受給者は、毎月の家賃が生活保護によって担保されているので、家賃滞納の心配が少ないことから、生活保護受給者を専らターゲットとした賃貸住宅市場が形成されている地域も見られる。(P52)
●「私たちは『ハウス』を物理的概念として理解し、『ハウスレス』を『物理的困窮状態』とした。これに対して『ホーム』は、『関係の概念』であり帰属の場所、共同体を示す言葉であるがゆえに、『ホームレス』は『関係における困窮状態』を示す言葉と意味づけた」・・・奥田の定義によれば、「物理的困窮状態」を解消しても「関係における困窮状態」を解消しなければ、どこで生活していようとも「ホームレス」状態である(P58)

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