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2008年12月11日 (木)

建築雑誌 200812

 今月の建築学会誌「建築雑誌」で、「環境共生を巡る7つの論点」と題する特集をしている。「解題1:事実はまま常識に背馳する」というタイトルが付けられたリードから情動的な地球温暖化対策に対する疑念を掲げているが、続く各パートでも、最近の環境対策に対して批判的な対談や論文が並ぶ。
 「地球温暖化は二酸化炭素のせいなのか?/渡辺正・東京大学教授」「リサイクルの功罪/安井至・科学技術振興機構上席フェロー」。これら2つは談話のため、批評的な会話が交わされたという印象だが、その後の4つの論文では、情緒的な環境対策に対して実証的かつクールにその効果や対応を吟味している。「えっ、そうなの!」とその内容に正直驚いた。
 「ヒートアイランドの功罪」(執筆:鳴海大典・大阪大学講師)では、ヒートアイランド対策の費用便益評価という視点から、ヒートアイランドは、エネルギー・資源側面では、住宅においては冬季影響が優勢して総量減となること。また人間健康の面でも、疾患に応じ増減があることを明らかにして、必ずしも「ヒートアイランドを悪」と断定することはできないと評価を留保している。
 続く「緑はどこまで都市を冷やせるのか?」(執筆:成田健一・日本工業大学教授)では、緑のカーテンの蒸散作用による気温低減効果はほとんどなく、日射を遮る効果しかないこと。また屋上緑化も、断熱材がない建物ならまだしも、通常の50mm程度の断熱材を挿入した建物では付加的な断熱効果はほとんどなく、気温低下効果もほとんどないとし、結局アメニティ向上の効果しかないと結論付けている。
 田中俊六東海大学教授の「屋上緑化とヒートアイランド」でもほぼ同様の結論だが、冷房排熱が高温化の原因とする説に異議を申し立て、さらには冷却塔の方が屋上緑化よりはるかに蒸散効果を有していると主張する。
 結局我々は、環境対策という美名の下にムダな投資や計画を重ねているのではないか。もちろん「もう屋上緑化や壁面緑化はやめた」という脊髄反射的な反応をするのではなく、求められるのは、人間心理面やアメニティ上の効果を考え、適材適所で採用する姿勢だろうが、いずれにせよかなりショッキングと言うか、興味深い特集だ。

●「ヒートアイランドは悪者か否か」という問いに対して我々が"客観的に"白黒を判定することは非常に難しい。(P012)
●ヒートアイランドの対策効果をエリアの平均気温低下量で評価するならば、緑化に過大な期待をするのは間違いである。むしろ局所的なクールスポットを創造し、体感温度を下げる方策として緑を考えるのが妥当である。(P015)

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