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2009年11月

2009年11月30日 (月)

民間非営利組織による住宅供給と貧困ビジネス

 「民間非営利組織による住宅事情」に関する研究報告を聞いた。都市再生機構都市住宅技術研究所の海老塚氏による講演で、海老塚氏の執筆で3月に発行された同名の書籍をベースにした話。もっとも、本書を私はまだ読んでいないし、海老塚氏の講演も、民間非営利組織による住宅供給事例の報告が中心だった。
 紹介された住宅は、敷地共同化・コーポラティブ住宅として、「みくら5:まち・コミュニケーション」(神戸市長田区)、「COMS HOUSE:都市住宅とまちづくり研究会」(千代田区)、「つなね:つなねコーポラティブ住宅建設組合」(奈良市)、「浄瑠璃:NPO法人FUSION 長池」(多摩市)の4事例、高齢者住宅として、「グループリビングCOCO湘南台:NPO法人COCO湘南」(藤沢市)、「サービスハウス ポポロ:NPO法人MOMO」(厚木市)、「グループホーム メゾネットたんぽぽ:ぬくもり福祉会たんぽぽ」(埼玉県飯能市)、「グループホームなも:名古屋南医療生協」(名古屋市)、「ぼちぼち長屋:社会福祉法人たいようの杜?」(愛知県長久手町)の5事例、ホームレス住宅として、「千束館:NPO法人ふるさとの会」(台東区)、「やまぶき舎:スープの会」(新宿区)、「ハーバー宮前:NPO法人神奈川県消費者信用生活サポート」(厚木市)、「行徳荘:NPO法人エス・エス・エス」(千葉県市川市)の4事例。
 さらに、民間非営利組織に着目した欧米各国の住宅政策の歴史の概略の説明と、欧米との比較を通じた日本の民間非営利組織による住宅供給の提案がされた。
 最も興味を惹き、また注目をしたのは、ホームレス住宅の事例である。紹介された各住宅とも、入居者が生活保護費等から支払う利用料金により運営されており、住居費は関東エリアの住宅扶助費である53,700円。これに生活費を3~7万円加算して徴収している(「やまぶき舎」は自炊のため無料)。
 平面図を見ると、各部屋狭小で、1室に2ベッドという施設も多く、東京の住宅家賃としては格安なのだろうが、公営住宅と比較するとかなりの高額という気がする。公営住宅等の場合は住宅供給主体に対する補助がベースに低額な家賃設定がされており、これらのホームレス施設の場合は入居者に対する直接の住宅費扶助が行われている。公的支援の対象者が違うわけだが、生活保護世帯に対してはこうした住宅供給が事業として成り立つというのは興味深い。
 事例最後のNPO法人エス・エス・エスは首都圏でかなり手広く事業を展開しており、施設数127施設、入居者は約4000人。職員も正規職員200名、アルバイト職員250名を数え、事業収入は40億円に近いと言う。こうした状況に貧困ビジネスという批判もあるそうだが、貧困ビジネスと非営利活動の線引きは難しい。
 今月から離職退去者向けの住宅手当もいよいよ始まるそうだが、住宅手当や住宅扶助費などの家賃補助制度と公営住宅制度との関係がどうなっていくか。今後の状況変化に興味が持たれる。
 もう一つ話題になったのが、シェア居住の事例である。民間空き家を借り上げグループホームとして施設提供している「ほっとポット」(埼玉県)や文京区などのシェアードハウスの事例などが紹介されたが、考えてみれば昔の賄い付き下宿であり、当然そういう居住形態は考えられる。大東文化大とURが連携して実施している高島平団地や千葉大とURが連携して実施した西小仲台団地のシェア居住の事例も、高齢者と若い世帯とのミックス居住として注目を集めているが、ぼちぼち長屋のOLや子育て世帯居住と同じコンセプトであり、当然考えられる居住形態だ。
 海老塚氏からは、民間非営利組織による住宅供給を活発にしたいがどうしたらよいだろうか、という問題提起がされた。家賃補助制度の普及など、公的支援の拡充がなければ難しいと思うが、公共住宅との関係で言えば、公共住宅主体が住宅供給から撤退するとともに、民間非営利組織による住宅供給事業に対して家賃補助を行い、余剰技術者による民間非営利住宅事業の起業を支援・誘導するというスキームが考えられる。
 現実、民間非営利組織による住宅供給を担うことができる専門的人材は公的住宅主体や民間住宅事業者が抱えているのが実態であり、現在のぬくぬくした就業状況の中から非営利活動にチャレンジすることを期待するのはほとんど非現実的である。チャレンジに足るリスクヘッジとチャレンジせざるを得ない環境への放出がなければチャレンジが起こるはずもない。
 そういう意味では、例えば、退職金代わりにURの住棟を一棟ずつ、退職者に譲渡することにすれば、イヤでも非営利の住宅供給事業を始めるのではないか。講演会後、そんな暴論を友人と交わしつつ帰途についた。

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2009年11月 3日 (火)

コミュニティを問いなおす

 あとがきで、本書は「グローバル定常型社会」と”対”の関係にある、と書かれている。「グローバル定常型社会」で語られた有史以来の歴史認識とその上で提唱される「環境と福祉の統合」。ローカル・コミュニティを出発点としたグローバル・ミニマムな対応という発想をさらに問い進めた結果、筆者の目に止まったのは都市計画と住宅政策だった。
 全体3部構成で、第1部「視座」、第2部「社会システム」、第3部「原理」で構成される。第1部は、「都市とコミュニティ」を主題においた第1章「都市・城壁・市民」で始まり、「コミュニティの中心」という視点から、「空間的な多様性」による解決へと目を向ける。そこでは「福祉地理学」や「空間化するケア」という独自の視点が示される。
 第2部「社会システム」では、都市計画の国際比較や歴史軸で見た都市政策・福祉政策の変遷を分析し、第5章で「ストックをめぐる社会保障」を検討する。自治体に対する土地・住宅政策アンケートが引用されているが、内容についてはそれほど目新しいわけではない。逆にこれまで福祉政策に目を向けていた筆者が都市政策・住宅政策をストック政策として注視する視点が興味深い。そして「福祉政策と都市政策の統合」である。
 ここで筆者は、今後重要となる政策として次の4つを列記する。(1)「人生前半の社会保障」の強化、(2)住宅の保障機能の強化、(3)福祉(社会保障)政策と都市政策の統合、(4)課税・財源のあり方、である。特に3点目については、都市マスなどの最近の方向を評価しつつ、「空間格差や社会的排除を生みにくい都市のあり方」という課題を指摘する。現に公営住宅で起きている貧困の集中、スラム化という状況に対して、解決の方向を示唆するものであり、確かに福祉政策と都市政策、なかんずく住宅政策は一体のものである。
 第3部は全体を振り返り、特に第6章では、現代社会の構築の重要な起動源である「科学」に目を向け、人間(個人)と社会(コミュニティ)と自然の一体化の方向を指摘する。その上で、筆者の学生時代の問題意識「独我論」を引き合いに、コミュニケーション、新しいコミュニティ、普遍的な価値原理の構築の3つを定常化する時代におけるポイントであると指摘する。
 本書はコミュニティ論であり社会論であるが、都市政策・住宅政策の転換と重要性が一貫して述べられている。その点で、都市・住宅の専門家にも大いに参考になる。広井氏は「定常型社会(岩波新書)」の時から注目してきた社会学者であるが、本書を読み、ますます目を離せないと思った。
【参考】
「定常型社会」
「とんま天狗は雲の上:グローバル定常型社会」

●現在の日本の都市において、見知らぬ者どうしのコミュニケーションがほとんど見られないということと、いま述べたような「建物」の孤立性ということは表裏のものに見える。つまり人と人との関係のあり方という「ソフト」面と、建物どうしの関係や全体としての街並みという「ハード」面のありようとは不可分の関係にあるということである。(P041)
●”「福祉」を場所・土地に返す”こと、つまり福祉というものを、その土地の特性(風土的特性や歴史性を含む)や、人と人との関係性の質、コミュニティのあり方、ハード面を含む都市空間のあり方(たとえば商店街や学校、神社・お寺等、先述の「コミュニティの中心」の分布やポテンシャルなど)と一体のものとしてとらえ直していくことが重要となっている。(P083)
●こうした「外部」との接点(あるいは外部に開かれた”窓”)としての性格をもつ場所が「コミュニティの中心」としての役割を果たしてきたという事実自体が、「コミュニティ」というものが本来的に外部に開かれた存在であるということを示している、といえるのではないだろうか。同時に、そうした内部と外部との動的な相互作用が、コミュニティそして人間の「創造性」ということと重なっているのではないだろうか。象徴的にいえば、コミュニティはその「中心」において外部へと”反転”するのである。(P092)
●今後の(経済成長という目標の絶対視から抜け出た)成熟化ないし定常化の時代におけるコミュニティやつながりの構築において、(1)ごく日常的なレベルでの、挨拶などを含む「見知らぬ者」どうしのコミュニケーションや行動様式、(2)各地域でのNPO、社会的起業その他の「新しいコミュニティ」づくりに向けた多様な活動、(3)普遍的な価値原理の構築がポイントになる(P249)
●結局自分がやっていることは「人間についての探求」と「社会に関する構想」という二つに集約されると感じているが、コミュニティというテーマは、ある意味で他ならずこの両者を架橋する、結節点のような主題のひとつであると思われる。(P289)

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