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2009年12月26日 (土)

ドイツ流街づくり読本

 筆者は新潟に生まれ、ドイツに渡って建築事務所に就職し、ドイツの大学で学び、ARCHITEKTの称号を取得してドイツで建築家として活躍をしている。ドイツで建築活動を行う中で、ドイツの都市計画を知り、日本でその意味が十分に伝わっていないことを痛感し本書を執筆したと言う。
 「街づくりと民主主義」と題する第1章は、欧州の都市計画の思考方法、街づくりを支える国民意識やおらが町の建築や町並みに対する住民意識などを論じる。総論に匹敵する部分である。
 「欧州における都市の変貌」と題する第2章では、都市再生の実例を多く紹介している。そして第3章が「ドイツの都市計画」である。
 F-プラン、B-プランに代表されるドイツの都市計画は、もう十分知っているつもりでいたが、建設法がまずあって、その精神の中で建築許可制度があり、必要に応じてF-プラン、B-プランが策定されているという基本的な構造については初めて教えてもらった。だからF-プラン、B-プランが絶対ではなく、策定されていない地域も多くあり、また計画や建設法が金科玉条ではなく、建築家のデザインがさらにその上を超えることを許容し、かつ期待している、という記述は興味深い。
 そして第4章では、新潟の街を素材に、実際にB-プランを提案してみせる。新潟市は地震の際に訪れたが、詳しく知っているわけではないので、提案の妥当性などは十分には理解できないが、空港や新幹線、航路などの大きなインフラ・フレームから、一街区の計画づくり、建設計画図の提示まで、きちんと作業をしているので、その点ではわかりやすい。
 それにしても、やはり住民意識がベースにある。これまでのようにドイツの都市計画を形だけで理解していたのではその差は埋まるどころか、別世界だという声をよく聞くという記述はよくわかる。その点では、ドイツ都市計画の意味や神髄を理解してほしいという著者の意図は伝わってくる。そして改めて、その違いは大きいと感じざるを得ない。

●自由であるための義務は自由であることの権利に優先するという認識は、これを勝ち取ってきた民主主義にはあるが、与えられた民主主義には欠落しているのである。(P40)
●住居と労働の場所が一緒であることや、建物の細分化、小型化という流れだけを見れば、都市はストラクチャーを再び中世のディメンションに戻していくのではないかと言えるかもしれない。中世都市は人間のスケールで造形されていたから、ある意味でこの流れは都市が「人間都市」へ再生することなのかもしれないし、・・・本来のあり方に回帰するということなのかもしれない。(P93)
●建設法34条の基本は、「新たに計画する建設物が周辺地域の既存の健全な居住環境を保全し街区の景観に悪い影響を与えることなく、むしろ街区の特性に適合し、さらに公共の利益に反してはならない」ということである。(P114)
●建設法34条は、規律としては一般的な性格であるため、自治体がある地域の都市形成に強い政策意志をもって計画指導を行いたいときには、より具体的な指針計画が必要になってくる。これに対応するのが、自治体主導で作成される建設指針計画である。これは土地利用計画図(F-プラン)と建設計画図(B-プラン)で構成されている。(P122)
●ドイツ連邦建設法による立法者側からの許可条件も、さらにB-プランの都市計画決定事項も、個人的な見解に基づいているので、その法的根拠を超えるような創造性のある提案は、誰が行っても受け入れられて当然と言うことができるであろう。・・・創造性のあるデザインを要求するB-プランの本質は、行政側に制度にとらわれない柔軟な対応を要求している一方で、建築家には、・・・社会的根拠をもって精度を超えることのできるデザインを問うている。(P132)
●都市デザイン、または街づくりとは、その地域の特徴を生かしながら一つ一つの建物を関連づけながら建設して、その結果として形成された異なった特徴のある地域を都市のビジョンという大きな枠の中で、都市施設や交通網などの基盤要素を土台にしながら組み合わせていくものであると言える。(P135)

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