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2009年12月15日 (火)

格差社会の居住貧困

 日本住宅会議からは隔年で「住宅白書」が発行されている。2007-2008のテーマは「サステイナブルな住まい」だから、「居住貧困」がテーマになるとは世相が大きく変化したものである。「居住貧困」という概念は、早川和男先生の「居住福祉」からつながる住宅問題の中でも一貫したテーマである。しかし今回の不況の中で、従来の狭小劣悪居住や公営住宅不足といった視点から、ホームレス問題がさらに深刻化したことに加え、住宅ローン破綻や外国人の居住問題、母子・父子世帯や若中年単身等の居住問題の多様化、さらには欠陥住宅問題、郊外戸建て住宅地の空き地・空き家、マンション管理問題などさらに多様な問題が先鋭化し、深刻化して表に浮かび上がってきた。
 全部で52人の執筆者による5~8ページ程度の小論文が集められ、これらの多様化する問題に関する実態報告(実態編)と施策提案や施策要求が綴られた展望編に加え、海外編として、アメリカ、英国、ドイツ、フランス、オランダ、デンマーク、韓国、中国の最新住宅事情報告がされている。
 執筆者の立場も主張の方向もてんでバラバラではあるが、多様な問題の所在と解決への一つの展望が示されており、網羅的ではあるが全体を理解するには役に立つ。中には、これまで思いもしなかった視点や課題理解のための枠組の提示などもあり、興味を抱かせる。
 それにしても海外編を読んでも、居住貧困に対する対策は経済のグローバル化や新自由主義政策の結果として世界各国で発生しており、必ずしも欧米型であれば大丈夫というわけではない。もちろん居住に対する基本的な権利認識が確立されていないわが国において、現状に対して有効な手だてを講じることの難しさは欧米の比ではないということは理解したが、日本の社会全体と同様、大きな転換が要請されており、かつ非常に困難な仕事であることを思う。相当に大変である。

●かつては地価が高いから住宅が狭い、といわれていた。しかし地価が下がる時は景気も悪い時であり住宅の販売価格も下げざるをえず、多くの場合、供給する面積も狭くなる。地価対策として、容積率のアップにより住宅の供給を増やしながら、需要と供給のバランスから地価を下げることも考えられた。しかし、容積率を上げることにより短期的には地価がそれに応じて高騰し、バブルを引き起こした。(P47)
●住所がないと雇ってもらえないので、居所と雇用がセットになった仕事を探さざるをえない。・・・こうした就労は、・・・仕事が終了すれば雇用も居所も失う不安定な雇用である。「居住が保障されていない」から安定した居所を確保する機会と交換に不安定な就労と居住を手に入れざるをえないのである。(P56)
●グループホーム等の火災を踏まえた建築指導の強化という流れの中で、障害福祉現場への影響の大きさを十分に把握しないままに、一方的に「寄宿舎」としての用途変更手続きを求める自治体が増えてきている。寄宿舎としての建築基準を満たすためには、二つ以上の直通階段、界壁の設置、一定以上の廊下幅・階段幅など、あまりにもハードルが高く、小規模な民家を転用してグループホームを開設することは難しくなってきている。(P217)
●現在の社会福祉施設は、援護を必要とする人びとに対し養護する立場でサービスを提供しているが、今後は、援護を必要とする人びとの個性を伸ばし、できることを増やしたり維持したりするために、施設が活用されるべきではないだろうか。(P230)
●これまでごく教科書的には、都市における市街地の拡大は都市活動の集積とその活発化によってもたらされると考えられてきた。しかし、今日の地方都市の現象は、中心市街地が空洞化しているのもかかわらず、市街地の拡大が進行しているのである。つまり、都市活動が市街地拡大のプッシュ要因になっているのではない。現実は農業・農家・農地の側からのプル要因が、市街地拡大をもたらしているということである。(P270)
●社会住宅ストックの拡大が民間賃貸住宅市場を衰退させ、HAによる供給および管理には競争原理がまったく働かない状態であった。そのため、コスト削減やサービス向上がされず、改革が必要とされたといえる。しかし、改革によって低所得層の空間的集中が社会問題化し、別途その対策コストが必要になっている。むしろ、住宅が社会政策(労働市場や所得再配分、社会保障)、あるいは都市政策の文脈の中で再検討される段階にあったといえる。(P315)

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