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2011年6月10日 (金)

東日本大震災と住宅の耐震化

 4月以降、忙しい毎日が続き、なかなか落ち着いてブログを書いている時間が持てない。3月11日に地震が発生して以来、はや3ヶ月が過ぎようとしている。最初のうちはガソリン不足などもあり、現地に近付くことすら難しい状況だったが、最近は専門家からの調査報告等が行われるようになってきた。
 ここ1ヶ月ほど、地震学者や建築構造を専門とする研究者による講演を3回ほど聴いた。素人聞きで誤って理解している部分もあるかもしれないが、まとめと感想を整理しておきたい。
 最初は5月19日に聞いた名古屋大学地震火山・防災研究センターの山岡教授の話。先生は地震学の立場から、東北地方太平洋沖地震の特徴や東海・東南海地震に向けた課題についてお話をされた。
 地震の直後に「今回の地震は3つの地震が複合して起きた」と報道されたが、最初に三陸沖、直後にその南側のエリアに広がり、さらに日本海溝沿いの部分で地震が発生した。特に最後の地震による海底の変動が大きく、大きな津波を発生させたという説明だったかと思う。
 他に東海・東南海地震に向けた検討課題なども話されたが、既にほとんど忘れてしまった。ちなみに、管首相が浜岡原発停止要請時に口にした「東海地震の発生確率87%」は、参考値として記載されているもので、正式なものではないと言っていた。
 次いで6月3日には東京大学名誉教授の坂本功先生の講演。坂本先生の話は、先生自ら宮城県や浦安近辺を見て回ったスライドから始まった。その上で、今回の地震被害の特徴として、(1)津波被害、(2)地盤の液状化、(3)天井の落下の3つを挙げられた。
 木造住宅が意外なほど壊れていなかったことについては、木造を倒壊させる1秒超の周期成分が少なかったことを指摘された。これは坂本先生の前に被害調査報告をされた名古屋大学の勅使河原先生も指摘されていたが、応答スペクトルは周期0.5秒以下の部分では兵庫県南部地震を上回っているが、1秒前後より長い周期の部分では建築基準法に定められた設計基準加速度を下回っているということだった。
 地盤の液状化被害に対して浦安等では既に改修工事に入っている住宅も見られるそうだが、先生が工務店等に聞いた話では、傾いた基礎にスペーサーをかませて水平にする工事で300万円、基礎から水平にしようとすれば1,000万円位かかるそうで、地震による軸組みの傾きでも大工仕事だけなら300~500万円で済むことと比較して費用がかかると言っていた。
 講演の最後では、2005年11月にE-ディフェンスで行われた在来木造住宅の実物振動実験のビデオを繰り返し流しつつ、その意味について語られた。耐震補強前の倒壊した住宅の判定値が0.5、倒壊しなかった住宅が1.8だが、後者ですらかなりの被害が見られる。これについて、兵庫県南部地震のJR鷹取駅では法で想定する2倍程度の地震力があったこと。これに対して通常の木造住宅であれば、診断で計上しない二次部材による耐震効果が診断判定値の3~4倍は見込めるのではないか、と話されていた。ただし二次部材による安全度は計算できないだけに過信は禁物と釘を刺すことを忘れなかったが。
 そして昨日の6月9日には、名古屋工業大学の井戸田先生の講演。井戸田先生も地震後、現地調査に行かれており、いくつかのスライドを見せていただいた。先生からは木造住宅の被害の特徴を、(1)津波被害、(2)地盤の崩壊や液状化、(3)地震の揺れによる被害と分類され、(3)については短周期の揺れによる屋根瓦の損傷や土蔵の崩壊が目立ったことを指摘されていた。
 また、地震被害に加え、東海・東南海地震対策として耐震改修の必要性や改修工法まで幅広く話があった。中でも先生の研究室で作成された「木造住宅の耐震リフォーム」と題するパンフレットは優れもので、地震に関する様々な知識、住宅の耐震性と耐震改修の効果、改修工事の概要までが非常にわかりやすく、センスよくまとめられている。
 また「想定外」ということについて興味深い話をされた。牛乳などの品質保証期間を例に挙げつつ、一般の方は建築基準法に適合すれば絶対地震に安全と思いがちなので、その常識を変える必要があるという指摘だ。確かにそうで、住宅性能表示制度で耐震等級3まであるように建築基準法ギリギリの建築物は、震度6強の地震に対して倒壊はしないが損傷は受けるということが理解されていないのが現実だ。
 「想定外」という言葉は、工学分野ではあってはいけない言葉だが、「設定した地震動以上では壊れる可能性があります」とは言いにくいのも確か。山岡先生も、津波被害が必ずある地域の建築物対策は、保険制度ではなく積立制度にすべきだとおっしゃっていたが、想定される被害(いつ、どれだけの被害かは不明)に対してどう備えるかは、人生観に通じる部分もあり難しいと感じる。
 井戸田先生から、「東日本大震災では震度7でも短周期の揺れが多かったが、東海・東南海でも同様になるという保証はない。どういう周期の揺れが卓越するかは起こってみなければわからない」という話があった。東日本大震災は津波被害がなければ震度に対して被害が小さい稀な地震ということになったのかもしれない。東海・東南海地震もそうであれと願いたい。

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コメント

瞬間的な考えですが、結局、どこまで備えるかということに尽きるような気がします。
基準法レベルの地震は頻発し、その3倍くらいの地震動は当たり前に起こっている今、基準法3倍くらいの耐力を持った家をつくるか。地震の時耐えてくれればいいと言うレベルの住宅にしておいて、地震後は仮設なり、災害住宅なりに頼ると考えるか。
津波も同じ。津波が来る可能性の場所には住まないか、津波が来るたび逃げて、家はその度建て直すか。
かつて、天皇が替わるたび遷都していた時代もあります。伊勢神宮は20年で遷宮します。もともと、仮住まいが日本の本質かもしれません。
生命は守るが、財産はその度新たにする、と割り切る方法もありかと思いました。

投稿: heromickey | 2011年6月12日 (日) 22時27分

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