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2013年1月 3日 (木)

都市は人類最高の発明である

 アメリカの都市経済学者による都市論である。タイトルのとおり、都市を絶賛する。「ジェイン・ジェイコブズに強く影響を受けている」と自ら語るが、経済学的視点で見ることでジェイコブズも否定した摩天楼を評価する。経済学者の常で、都市規制を否定し、交通課税等の経済政策を評価する。都市の成長管理政策が他都市や郊外の拡大開発を引き起こし、結果的に環境負荷を増大させていると批判する。スラムでさえ、都市の可能性があるからこそ貧困者が集まってくるのであって、地方にいたのでは彼らはもっと悲惨な貧窮の中に身を置かねばならないと都市が果たしている役割を評価する。そして「都市は建物ではない、都市は人だ」と言い、建物や公共施設建設から始まる都市政策を批判する。
 それらの指摘は一面的だが、事実でもある。だが同時に、都市への無批判な絶賛さは都市に起因するいくつかの問題点に対してあまりに楽観的ではないかとも思う。訳者の山形浩生氏も「訳者あとがき」で同様な感想を書くが、同時に日本の建築・都市研究者に対して、2011年1月の建築雑誌「未来のスラム」を取り上げて、「金持ちアームチェア学者たちの賢しらな哲学談義」と批判をする。確かに建築・都市サイドから語られる都市論はあまりに既存の都市計画論に寄りかかり過ぎているのかもしれない。
 それにしても、あまりに楽観的で一面的だとも思う。アメリカに身を置き、世界の成長を前提にしているからこその見識であって、現在の日本のように急速に人口が減少しようとしている国には適用できないのではないか。いや、クレーザーであれば、移民政策を提言するのかもしれないが、それも禁じられた都市は衰退するしかないのか。デトロイトやライプニッツの現在を紹介しつつ、衰退の事実に対応した縮小施策を評価する部分もある。
 だがやはり、筆者の眼は成長都市に向かっているし、それを賛美する。そして一概に否定できない部分が多くあるのも事実だ。我々はこの都市経済学者の指摘に耳を傾けつつ、なおかつ日本の都市の未来を考えていくしかない。都市は素晴らしい。それも事実だ。その成長力を生かしつつ、かつ継続していく道を。

●公共政策は貧しい人を助けるべきであって、貧しい場所を助けるものではいけない。ぴかぴかの新しい不動産開発は、衰退都市を飾り立ててはくれるが、その根底にある問題は解決しない。衰退都市の典型的な症例は、経済の強さに対して住宅やインフラがありすぎる、ということだ。構造物の供給があまりに多く、需要があまりに少ないのに、そこに公共のお金でもっと供給を増やす意味はない。建築主導の都市刷新の愚行を見れば、都市というのは建物ではないことがわかる。都市とはその人々なのだ。(P11)

●フォードはあまり知識がなくてもきわめて生産性を高められるようにした。でも人々があまり知識を必要としないなら、知識を広める都市の必要性も下がる。都市が強力な知識破壊アイデアを作り出すと、その都市は自爆に向かう。(P63)

●都市が成功していれば、新規住民を収容するだけの住宅を急速に建設できる限りは急成長する。都市が衰退するときには、それはきわめてゆっくり衰退する。人々は住宅ほど価値のあるものを放棄したがらないからだ。ある意味で、住宅の耐久性はありがたいことで、あまりリソースのない人々に安い空間を提供してくれる。安い住宅のおかげで延命している都市の悪いところは、それが圧倒的に貧乏人をひきつけ、きわめて恵まれない中心を作り出して、それが社会正義を求めて声を上げるということだ。(P85)

●都市が貧困者だらけなのは、別に都市が人々を貧困にするからではなく、都市が生活向上の見通しによって貧困者を引きつけるからだ。(P93)

●アメリカには作物育成に向いた湿潤な地域はいくらでもある。水を農地から都市に向ければ、カリフォルニアはすぐに、ずっと高い人口密度を維持できるだけの水を供給できるし、それでアメリカの炭素排出も減少する。/カリフォルニアの成長制限は、州をエコに見せかけることはできるが、結果としてアメリカ全体ではかえって環境を破壊し、世界的な炭素排出を増やすことになっている。(P278)

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