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2013年11月 9日 (土)

公営住宅は必要管理戸数ではなく年間募集戸数を重視すべき

 公営住宅に関わる仕事をしていると、「いったい公営住宅は何戸必要なんだ」と聞かれることがよくある。若い頃には、「収入基準が所得階層の下から1/3(当時)で設定されているから、総戸数の1/3ですよ」なんて答えていたが、現実には5%位しかないから一笑に付されて終わっていた。
 当時はまだ住宅建設計画法が生きていた時代で、住宅建設五箇年計画の策定にあたり、当時の建設省から、計画期間中の公営住宅建設戸数の推計手法が示され、それを利用して推計を行った。もっとも実際に計画に位置付けたい数値(概ね近年の建設戸数×5箇年)とは異なることが多く、さらに適当な理由をつけて増減をし、計画戸数を算出したものだ。
 その後、時代が変わり、現在は住生活基本法に基づき、都道府県住生活基本計画で「公営住宅供給目標量」を示すことになっている。「公営住宅供給目標量」とは従来のような計画期間中の建設戸数ではなく、募集戸数(新規入居戸数)である。このことがうまく理解されず、今でも「供給目標量とは募集戸数のことです」と言い添えたり、書き添えることが少なくない。
 公営住宅の必要管理戸数について、「収入基準をさらに引き下げれば、半分の戸数でもいいのではないか」という暴論を吐く人がいた。収入基準は現在、地方の条例に委ねられているが、これまで国が定めてきた基準をさらに下回る収入基準にした地方公共団体はほとんどなく、かなりの暴論だが、よしんばこれを受け入れたとして、どうすれば半分の戸数に削減することができるのかと考えてみた。
 現在管理している住宅には当然入居者がいるわけだから、即半減(半分を解体除却)することはできない。現在の入居者のうち収入基準を超過する者に退去を促していくのだろうが、たとえ空き家になったとしても共同住宅の各戸を一戸ずつ解体除却することはできず、棟単位で全戸が退去して初めて解体除却が可能となるのだから、老朽化した住宅や利便性の悪い住宅などを選定し、これらの住宅に入居する収入基準を満たす入居者には他の住宅への移転を促しつつ、地道に解体除却の準備を進めていく必要がある。
 また解体除却を決めた住宅には空家募集はできないから、募集戸数も大幅に減少することが予測される。収入基準を下げ、かつ募集戸数も減らすとなれば、当然大きな反対があるだろう。簡単に半減と言っても実際はそう簡単なことではない。
 現実的な政策として、収入基準は現行のまま、将来的な人口・世帯の減少に合わせて住宅管理戸数を減少させる場合を考えてみても状況は同じことだ。公営住宅の応募倍率は依然、全国的に数倍、都市部では数十倍となっており、入居者の綿密な移転計画と移転措置を伴わずに解体除却ができる団地はほとんどない。かなり早い時期からの入居者等への説明や広報、移転費用の支出等を行い、地道に老朽住宅の除却と建替住宅の建設に取り組んでいるのが実態だ。
 だが、老朽化住宅の建替えや長寿命化のための改善事業はしょせん現在入居している人々に対する対策である。公営住宅に入居できず、狭小・高家賃の民間賃貸住宅に入居する住宅困窮者が多くいる現状を考えると、真に重要なのは、これらの人々にどれだけ公営住宅を提供できるかということだ。
 住生活基本計画でいう「公営住宅供給目標量」とはまさにこのことである。もちろん、住宅管理戸数と空家発生戸数はある程度相関するから、一定程度の必要管理戸数を確保していくことももちろん重要だが、それが第一義ではなく、あくまで募集戸数が重要なのだ。必要な募集戸数を確保しつつ、老朽化等にいかに対応していくか。それが公営住宅を管理していく上で最大の目標であるべきだ。管理戸数よりも供給戸数。
 「収入基準を引き下げれば、必要戸数も減らせる」。そんな暴論を突きつけられて初めて、(長年、公営住宅に関わってきて恥ずかしながらようやく)、「公営住宅供給目標量」の意味を理解した。「必要募集戸数」と「老朽化対応」。この二つの目標から改めて今後の公営住宅施策に必要な方針を考えてみよう。新しい方向が見えてくるだろうか。

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