すまいづくり・あれこれ

2013年2月18日 (月)

岐阜県白川町で木造仮設モデル住宅を見学

Dsc02774 東日本大震災では被災後すぐに、事前に準備をしていた木造仮設住宅を隣町に建設した岩手県住田町の取組みが脚光を浴びた。これに触発された白川町では、林業の町としてこれまで取り組んできた「東濃ひのきと白川の家」を仮設木造住宅に適用。さっそく白川町版の木造仮設住宅を開発し、町内にモデル住宅を建設している。この事業を地域の組織として推進している「東濃ひのきと白川の家 木づなプロジェクト研究会」の主催により、「木造仮設住宅 宿泊体験施設 上棟見学会」が開催されたので参加した。
 岐阜県は、岐阜県産直住宅協会と(一社)全国木造建設事業協会との間で三者協定を締結し、被災時には岐阜県産直住宅協会が木造住宅建設業者の斡旋等を行うこととしている。町内の建築・工務店等で構成される「東濃ひのきと白川の家建築協同組合」が産直住宅協会の会員となっており、この組合に白川町森林組合、東濃ヒノキ白川市場協同組合、東濃ひのき製品流通協同組合、白川商工会、そして白川町が加わって「東濃ひのきと白川の家 木づなプロジェクト研究会」を結成している。
Dsc02787 当日は名古屋を朝に出て午前10時頃に白川町の「道の駅 清流白川クォーレの里」に到着した。駐車場の隅では既に建て方作業が着々と進行中。白川町産のスギとヒノキによる壁パネルと屋根パネルを標準化。壁パネルはプレカットした柱の溝に差し入れる形で壁を作り、最後に隅柱を上から落とし込んで柱・壁面が完成。その上に梁を落とし込み、束を立て、母屋を流して屋根パネルを敷き込んでいく。断熱材も木質系のものを使用している。作業中のモデル住宅はロフト付で13坪のタイプ。搬入は4トン車3台で、組立は4~5人の作業員で半日から1日弱。常時在庫を確保しているわけではなく、被災後1ヶ月で生産体制を整え、その後は月産100戸建設可能ということだそうだ。ただし外壁は角波鉄板、屋根は銅板葺き。もちろん設備機器や材料も通常の仕入ルートから入手する必要がある。
 上棟中のモデル住宅の隣には9坪タイプのモデル住宅が既に建設されている。4.5畳の和室とLDHに水回りという構成。杉板の内装が心地良い。また、研究会の方たちが特に強調していたのが、仮設住宅撤去後の再利用が可能なこと。また、焼却時のバイオマス利用など木造仮設住宅は環境にやさしい。
Dsc02803 建て方作業が続く現場を後に、駐車場の反対側に建設されている地場産材を利用した宿泊体験施設を見学。こちらには趣の違う木造のコテージが3棟建設されている。どれも快適に夜を過ごせそうだ。
 この日はこの冬一番の冷え込みで、道の駅に設置されたケーブルテレビの天気概況には、正午時点の気温がマイナス0.9度。最高気温はマイナス0.6度。明日の最低気温はマイナス8度と表示されている。午後は小雪がちらつく中を、白川町森林組合が平成20年度から事業を進める「提案型集約化施業モデル団地」の見学をした。これは約150ha、概ね20~45年の林地に作業路を開設し、間伐材を伐採・集積・搬出するもので、75名の所有者の理解を得ながら、国の補助も利用しつつ事業を進めている。作業路の整備や間伐材の伐採状況など、初めて見学したが大変興味深いものだった。非常に大がかりな作業で、間伐材の売却益だけでは到底こうした作業経費を賄えるはずもないが、少しでも所有者に還元できるようがんばっているとのことだった。
 続いて、東濃ヒノキ白川市場を見学。隔週の水曜日に市場が開かれるが、あいにく開催日の週末だったため、市場に置かれている木材は少なかった。市場は入札方式で行われるが、落札された丸太1本1本に符号が書かれた紙が貼られている。分数表示の分母部が落札者名、分子部が落札単価だそうだ。木によって単価が大きく異なるのが興味深い。
Dsc02812 続いて、東濃ひのき製品流通組合の製材施設、バイオマス発電施設を見学。バイオマス発電は近隣の林業や流木等から発生した廃木材を受け入れ発電。発電量は600Kwでこのうち400Kwは製材工場で利用。200Kwは売電をしている。また焼却時に出る蒸気熱は木材乾燥に利用。さらに焼却灰はセメント原料にリサイクルするなど地球温暖化防止につながる活動は大臣表彰も受けている。ただし経営的には赤字だそうで、売電への期待を述べられていた。
 最後に地元白川町、岐阜県、研究会の方々からのセミナーと交流会があった。個人的には産直住宅協会の幹部の方から岐阜県の工務店の状況等を聞かせていただいたのが興味深かった。林業県である岐阜県特有の背景があって成り立っている仕組みでもあり、すぐに愛知県に持ってこれる訳ではない。県・市町村・工務店・設計者・森林組合・製材関係者等、多くの関係者の連携が必要になる。中でも、木造仮設住宅の活用という面では、特に市町村の取組みが重要だと思う。白川町ではその点、町長主導でうまく動いているようだ。
 一方、木造仮設モデル住宅を開発する背景にはうまく木造振興につなげたいという意図がある。被災時の工事発注に乗り遅れまいとするだけでなく、通常時の産直住宅の建設促進に向けて、仮設住宅開発で培った技術等をうまく活用することが重要だ。白川町でも当然その意識で取り組んでいる。逆に言うと、前者だけでは必ずや失敗すると思われる。責任と覚悟を持った取組みが期待される。

●マイフォト 「白川町木造仮設住宅」

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2013年1月23日 (水)

公営住宅を転用した高齢者シェア居住の試み

 名古屋市では平成23年度末から3DK程度の空き室を改修して、高齢者が2人又は3人で共同で暮らすシェア住宅「ナゴヤ家ホーム」高齢者共同居住事業に取り組んでいる。先日は都市住宅学会中部支部の見学会で、名古屋市の職員の方の案内で今年度改修した市営上飯田荘を見せてもらうとともに、昨年からこの住宅を対象に研究をしている名古屋大学の小松先生及び上飯田荘自治会の鈴木会長に同席いただき、現状について聞かせていただいた。
Dsc02592 名古屋市営住宅の最近の応募倍率は20倍を超え、中でも単身高齢者向け住宅については40倍を超える状況になっている。また、既入居者の高齢化もかなり進んでおり、今回見学させていただいた上飯田荘に限れば、高齢者のみ世帯が4割近い状況にある。かつては単身者については29m2以下に限って入居を認めていたが、建替え事業の進捗等によりこうした小規模住戸が減少し、最近は55m2以下の住戸まで認めているが、単身で住むにはやや広すぎるという意見もある。
 こうしたことから3DK・55m2程度の住戸を2部屋又は3部屋の個室と共同スペース(エアコン・テレビ・冷蔵庫等は市が設置)からなるシェア住宅に改修し入居者を募集する高齢者共同居住事業を平成23年度から開始した。事業実施にあたっては、公営住宅法の規制もあり、目的外使用許可を得て、入居者に対して見守りサービス等を提供するNPO法人等に貸し出し、この事業者が入居者と入居契約を交わすという仕組みを取っている。事業者への貸し出しは所得月額104,000円の入居者相当の家賃(戸当たり概ね3万円)とし、事業者は見守りサービスに係る費用(一人当たり上限19,200円以内で事業者が決定。現在はすべて上限額を徴収。)を上乗せして入居者から徴収する。3人で居住した場合には約3万円÷3人+19,200円=約3万円となる。
Dsc02589 入居資格は60歳以上の自立して生活できる単身者で所得が月額104,000円以下としており、市がまとめて募集し、入居決定者については入居前ミーティングを行い、部屋割り等を決めることとしている。また今年度からグループ申込も受け付けている。今年度は12月中旬に26人募集をしたが、申し込みは15人に留まり、現在先着募集中である。ちなみに、他の住宅では満室になった住宅もあったが、見学をした上飯田荘は男性専用2戸6人を募集したが、応募がなかったとのことである。
 住宅の改修であるが、見学をしたのは南面2室を3部屋に仕切り直し、北面の1室を取り込んで広めのLDKに改修をした住戸である。個室は8畳和室と6畳に60cm幅の板間の付いた和室を、4畳に45~60cmの板間が付いた3室に改造し、バルコニー側半間は引き戸で仕切って縁側と物入れになっている。また共用スペースであるLDKは流し台や浴槽なども新品に交換され、広めの気持ちのいい部屋になっていた。改修費用は約450万円かかっているとのことである。
 なお、上飯田荘では他に、南面2室、北面1室をそのまま利用する3室タイプも昨年度募集したが、北面部屋の入居者に洗濯物を干す場所がないことから人気がなく、今年度からは北面居室タイプはやめて、南面に2室又は3室の2タイプの改修を行っている。ただし2室タイプはサービス料も含めた家賃が約3万5千円と割高になる。
 名古屋市ではこの事業の実施にあたり、昨年4月に市営住宅に応募した単身高齢者を対象にアンケート調査を実施した。また、小松研究室では上飯田荘で運営事業を受託しているNPO法人代表者及び自治会長へのヒアリングを実施するとともに、名古屋市の担当部局に対するヒアリングと情報収集を行っている。
Dsc02588 アンケートでは、「住まいを選ぶ際に重視する点」として「家賃」を選択する回答が最も多く、共同居住に対して「住みたい」は16%で、約半数が「住みたくない」と答えている。「住んでみたい」理由も「一般募集ではなかなか当たらないから」が最も多く、「住みたくない」理由では「他人との生活は不安」「風呂・トイレの共同使用はイヤ」などが挙げられている。「自立して生活できる」というのが市営住宅入居の条件だからか、NPO等によるサービスに対する関心は低い。
 昨年からの入居者の状況と生活実態についてのNPO代表者に対するヒアリングが非常に興味深い。入居者は全員女性(昨年は女性しか募集していない)で平均70歳前後、全員が清掃員などの仕事を持っている。NPO法人が行うサービスは見守りまでで介護や介助などは行っていない。共同生活を行うためのルール作り等の調整はNPOが関わっているが、その後はほぼ毎日巡回して様子を見る程度である。
Dsc02585_2 入居開始直後はゴミ出しや自治会掃除日の当番制などのルールを決め、これは今も守られている。またテレビの前にコタツを置き、仲良くテレビを見たり、夕食も当番制にして時々に一緒に晩酌をやることもあったそうだが、入居後7ヶ月を経過すると、コタツは片付けられ、テレビを一緒に見ることもなくなり、食事も各個室で取るようになっている。トイレットペーパーなどの消耗品は割り勘としているが、1回の使用長さを決めるなど、かなり世知辛い状況になっている。また浴槽の湯も一人入るたびに入れ替えるようになり、光熱費がかなりかかるようになっているようだ。
 しかしお互い直接ケンカするというわけではなく、不満や苦情はNPO担当者に伝えられ、必要なら仲裁やそれとなく指摘するなどが現時点でのNPO担当者の主な業務となっているそうだ。また自治会長によれば、自治会とNPOとの相互の連絡はなく、自治会活動については直接各入居者に伝えられ、当番制等により参加をされている。他の団地住民との関係は良好であり、周辺入居者からも特に苦情などは出ていないとのことだった。
 その後、しばし質疑応答と意見交換をしたが、思った以上に共同生活がうまく営まれていないことはショックだった。募集に対して人気がないことに対してNPOのサービス料金がサービス内容に対して高すぎるのではないかといった意見も出されたが、市としては上限料金を示して事業者が決定していること、入居者間の仲裁などで役割を果たしていること、将来的な身体状況の変化への対応を期待していることなどを説明されていた。また、現時点ではまだ入居希望者が少ないとは言え、一般住戸として募集することには、本来目的である単身高齢者募集の拡大に反することから、市としてはこれからもしばらく試行錯誤を重ねていきたい旨の意向を述べられていた。
Dsc02590 名古屋市の高齢者共同居住事業は全国的にも類を見ない実験的取り組みとして大いに評価したい。しかし一方で、高齢者のシェア居住が想定したほどにはうまく共同生活が行われていない状況も見えてきた。もちろん上飯田荘だけの事例研究であり、他の住宅では理想的な共同居住が営まれているのかもしれない。NPOからは、年齢条件をもう少し引き上げたほうがいいのではないか、同居人数が多い方が共同生活のトラブルが少なくなるといった提案もあるようだ。一方で参加者からは、北欧ではシェア居住は家賃対策として若者が行っていたが、近年は政府の若年住宅対策の強化で減少しているという話もあった。
 最近は日本でもシェア居住する若者が増えている。私の部下にも一人、シェア居住をしている若者がいたので、見学会の後、さっそく彼に話を聞いてみた。まず動機は「おもしろそうだったから」ということで、建築学科卒業者としてはその心意気やよし。住んでいる住宅はかつてマンションのオーナー世帯が住んでいた住宅で、スキップフロアの2階建て。リフォームをして8人で暮らしている。光熱費も込みで支払っているが、近傍住宅に比べ格別に家賃が安いわけではない。
 入居者全員が社会人で外国人もいる。時間帯もそれぞれ違うため、お互いあまり干渉はしないが、LDKはけっこう使われており、テレビを見る者、テーブルで仕事をやる者など色々のようだ。キッチンも順次使われているが、食事当番などはなく、基本的には自分の分だけを作る。時々、余分に作ってくれたものを分けてくれたり、「俺の分も作ってくれ」と言われることもあるようだが、お互いほとんど気にしない。ちなみにトイレットペーパーも気が付いた人が買い足し、掃除も気が向いた人が行っているそうだ。
 入居にあたっては管理会社の面接があった。また、家主が特に外国人の入居を希望しており、現在は外国人用に1室空けている状況だそうだ。ちなみに管理会社は1住宅当たりの入居者数が多い方が空き家リスクの観点から望ましいと言っていたとのこと。生活トラブルを勘案してということではない点が興味深い。ちなみに外国人入居者は日本人と共同生活することで日本文化や言葉を早く吸収できるなどメリットを感じている。彼もそんな交流を期待しているが、彼が外国語を覚えるよりもずっと早く彼らが日本語に達者になっていくと笑っていた。
 若者の場合は共同生活がうまくいかなければ引越せばいいという気楽さがあるし、民間であれば生活トラブルを起こしそうな人を拒否したり、退去勧告も行政に比べればやりやすそうだ。若者のシェア居住の場合は、共同生活に伴う交流に魅力を感じている。しかし、コレクティブ住宅で期待されるような家事の低減は考えてもいない。
 高齢者の場合は共同生活による交流を期待する人は若者に比べはるかに少ないのではないか。また、うまく行かなかったらハイ移転!というわけにはいかず、永住の場として我慢して生活をする意識が強い。共同炊事などコレクティブ型の生活をしようとしても、これまでの生活習慣からなかなか抜け出せず、柔軟性に欠けるため、なかなかうまく行かない。これは神戸のコレクティブ住宅などでもみられる傾向である。
 こう考えると、高齢者のシェア居住というのは、入居者の介護依存度が高いなどグループホームに近い形でないと難しいのではないかと思わざるを得ない。一方で名古屋市の単身高齢者の入居希望に少しでも多く応えていきたいという意向もよくわかる。他住宅の事例なども調査して、高齢者シェア居住の成功の可能性と条件などをさらに研究していく必要がある。興味深いテーマだと思うし、名古屋市のチャレンジを大いに評価したい。

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2012年7月13日 (金)

UR鳴子団地の再生と高齢者支援

Dsc01892 UR(都市再生機構)では平成19年末に「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を決定し、全国に約76万戸あるUR賃貸住宅の再生・再編を進めることとしている。中部支社管内にも約6万戸弱のUR賃貸住宅があるが、このうち約1万戸については団地再生や用途転換、土地所有者等への譲渡等を行うこととしている。今回訪問した鳴子団地は、UR中部支社が再生事業を進める団地の一つだ。
 UR鳴子団地は昭和37~39年度に開発された管理戸数2,196戸の大団地。そのほとんどはRC造4・5階建てのエレベータのない住宅で、入居者も60歳以上の高齢者が多く住む高齢団地となっている。
Dsc01897 URでは平成18年から全体4期に分けて、再生事業に取り組んでおり、現在最終第4期区域に着手したところだ。とは言っても、URの事業着手とは入居者説明会を開催したことを指すから、ハード的な整備状況としては、第1期区域の先工区で建替えが完了し、後工区でちょうど入居者募集をしているところだった。また第1期区域の一部は民間ディベロッパーに売却され、分譲マンションが完成間近という状況である。
 第2期区域は、今回完成した第1期後工区の賃貸住宅に入居予定の方たちが今まさに入居を待っている状況。木造サッシュが珍しい。移転後は解体され新しいUR賃貸住宅が建設される予定だ。また第3期区域の一部は商業施設用地として、今春に事業者が決まった。さらに第4期(民間事業者へ譲渡予定)へと着々と団地整備が進められていく。
Dsc01891 また、団地西側の区域はUR賃貸住宅活用エリアとして、現状の階段室型5階建てのまま、継続管理していくこととしている。この区域が721戸。第1期・第2期でUR賃貸住宅として建て替えるのが448戸。残りは民間事業者へ譲渡する計画だ。
 今回はまずUR中部支社住宅経営部の方にこうした団地再生計画について説明いただき、また合わせてUR全体のウェルフェア事業の取組方向や事例を説明していただいた。
 現在2,196戸から1,169戸へとかなり大胆に縮小していくのは、URの置かれた立場からすれば既定の路線か。このうち721戸は現状のままだから、建替え住宅に限れば、1,475戸を448戸へと約3割まで縮小する。もちろんその代わりに民間分譲マンション等が導入されるわけで団地としては入居者バランスの観点からも適正化の方向だろうし、団地周辺も戸建て住宅が多い郊外住宅地で、昨年春には地下鉄・鳴子北駅が開設され、今後はさらに発展が見込まれる。
Dsc01906 こうした地の利がある団地で、団地再生のテーマは「多様な世代が暮らし続けられる地域拠点の再生整備」。もっとも団地内に鳴子小学校と鳴子中央公園を抱え、既存の幼稚園もあることから、子育て支援施設整備は既に名古屋市の手で整備済み。
 高齢者支援について、今回、団地内に事務所を設置し、施設整備を進めているNPO法人・たすけあい名古屋の渡部理事長に話を伺った。ちなみに現状のまま継続管理するエリアは、URの団地将来像イメージでは、「緑豊かで閑静な環境を享受する住宅ブロック=高齢者支援サービスを享受する高齢者をメインターゲット/上層階には鳴子の住環境を評価する若年世帯」と謳われている。ゆったり配置された住棟が豊かな緑の中に立地しているのは、確かにすばらしい。ただし、階段室型5階建て住棟の上層部を「鳴子の住環境を評価する若年世帯」と謳うのは、わからないでもないが、実際の入居者はどうなのだろうと心配になる。
Dsc01911 「NPO法人・たすけあい名古屋」の事務所はUR賃貸住棟の1階、かつてはショッピングセンターが入っていた区画を借りている。NPO創設は平成9年。当時は代表理事の自宅を事務所にしたが、9年ほど前に鳴子団地内の空き店舗を借り、さらに団地中心部の空き店舗も借りて拡張した。業務は介護保険事業と生活支援サービス活動。典型的な介護福祉NPOだが、鳴子団地を中心とした鳴子町周辺を活動領域に、地に足のついた活動を展開している。
 平成22年度に愛知県医師会総合政策研究機構の調査に協力して、鳴子団地の高齢者生活実態調査を実施。鳴子団地の高齢化率は39%、団地に住んで30年以上の世帯が64%などのデータを得ている。介護保険利用者は6%で要介護認定が3%というのは思ったより低い印象だが、今後急速に増加することが見込まれる。
Dsc01913 代表理事は特に独居・認知症高齢者の増加を懸念されていた。そこで、介護保険を利用されていない94%の方の見守りについてどう考えるか質問したが、「それは政治的課題だ」として答えてもらえなかった。認知症高齢者の増加というのは、介護業務の増大に伴う十分な介護予算確保の必要性を主張したかったのかもしれない。私としては介護保険にたどり着く前に一人で死亡する独居高齢者の孤独死問題への対応を聞きたかったのだが、質問の意図を理解してもらえなかったのかもしれない。団地に根づいたNPO等が独居高齢者の見守りに積極的に取り組んでもらえるといいと思うが、何らかの支出支援を受けなければ、NPO経営上は難しいということか。
 NPOでは事務所の隣の区画を借り上げ、定員25名の小規模多機能施設「鳴子のおひさま」を昨年10月にオープンした。質疑応答後、この施設を見学。ただし居住部分は支障があるため、食堂を通り過ぎただけ。裏側に鉄製階段を設置し、緑豊かな団地内公園に面している。将来的には喫茶店等の営業も模索しているとのこと。また隣は団地集会所になっており、地域の高齢者を集めた健康体操の会なども開催しているそうだ。
Dsc01907 帰りに、第1期後工区のUR賃貸住宅のモデルルームを見学した。2棟106戸のうち、従前団地入居者向けを除く22戸を一般募集中。2DK(55m2)7万円台、3DK(68m2)9万円前後というのは立地と仕様からすればけっして高くない。私たちが訪問したときにも残り戸数は少なくなっていたが、今HPで確認すると全戸申し込みがあったようだ。
 豊かな住環境と地下鉄開通で利便性が飛躍的に向上した鳴子団地は、URの再生事業の中でもモデル的な取組ができた団地の一つだと思われる。そして意欲的なNPOの存在。その中で思い切って継続管理エリアを設けて緑を保存し活用する姿勢は評価できる。また、共益費を団地全体で融通する中で、公営住宅に比較すると既設住棟の美観も十分保たれている。課題は今後、継続管理エリアの入居者のさらなる高齢化が予測される中で、どういう環境になっていくかという点。URが謳うような「上層階には鳴子の住環境を評価する若年世帯」がそれほどいるとは思えない。たすけあい名古屋の代表理事の言うとおり、独居高齢世帯の問題に対して、対応策を考えるのは名古屋市の福祉部局ということになるのかもしれないが、この点に対するURの積極的な関わりについてはあまり聞かれなかったことが残念だ。

●マイフォト 「UR鳴子団地の再生」


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2012年5月17日 (木)

愛知県営住宅めぐり-最も新しい住宅と最も古い住宅

 愛知県には約300団地、6万戸の県営住宅がある。このうち名古屋市内にあるいくつかの住宅を見て回った。
Nec_0009 最初は県営紅梅住宅。この3月に竣工し、4月から入居開始をした5・6階建て32戸の新築住宅だ。環境共生に配慮し、屋上緑化や雨水貯留槽の設置、駐車場の緑化等を行っている。また、1階の一角には集会所が整備され、その前面にはウッドデッキが設置されており、こぢんまりとしているが、明るく魅力的な住宅だ。
 ここには以前、昭和25年竣工、RC造4階建ての住宅が建設されていた。昭和25年と言えば公営住宅法が施行された年で、愛知県営住宅のうち最古の住宅だった。従前の住宅を見たことがあるが、豊かな木々に囲まれた年季の入った建物は、景観的にも周囲に溶け込んだ感じがした。
 だが、いざ建替となると、周辺住民から「県営住宅の住民が高齢化しており、今までは落ち葉清掃などを地域で協力してやってきたが、建て替えるのならば地域住民に迷惑がかからないよう、樹木の伐採等をお願いしたい」という要望が寄せられた。このため、建替後はかなり樹木を間引いたが、それでも敷地のコーナーには従前からあった桜などが残されている。
Nec_0018 紅梅住宅に続いて雁道住宅を見に行く。昭和26年竣工で、紅梅住宅が建て替えられたので、今はこちらが愛知県営で最古の住宅だ。RC造4階建て48戸。中庭を囲んで24戸ずつ2棟が並んでいる。庭にはブロック造りの各戸収納庫が並ぶ。住戸前に伸びるシュロの木が目を惹く。住戸南面に人研ぎの洗面台が据え付けられている。
 雁道住宅は敷地の関係で建替えもままならず、当面は存続する予定だが、新規募集は停止し、耐用年数経過後は除却予定となっている。
 二つの住宅を続けて見学し、愛知県営最古と最新の住宅だということに気付いた。続いて建替や改修工事等を予定している住宅をいくつか見学したので紹介したい。
 まず南区の三吉住宅。昭和53年竣工の4階建て2棟115戸の住宅で、近々エレベーター設置工事を行う予定となっている。シンプルな機能主義的デザインはこの当時の流行か。
Nec_0025
 続いて港区の千年住宅。こちらは平成8年に3K住戸に1室増築する工事を行っている。昭和50年代末から平成7年頃にかけて、こうした工事が行われてきたが、元の住宅は昭和30~40年代に建設されており、そろそろ建替え時期を迎えている。
Nec_0027
 途中で名古屋市営宝生荘に寄る。外付けPCフレームによる耐震改修が行われている。フレーム設置により陽当たりが懸念されるが、バルコニーは改修の結果広くなっており、住民からの苦情はほとんどなかったと聞いている。
Nec_0026
 続いて中川区の万場東住宅。2つの住棟をL字型につないでいる。当然、一つは南北軸。昭和54年建設だが、当時の住宅には南北軸に配置した住棟が多い。少しでも多くの戸数を建設したいという要求があったのだろうか。
Nec_0037
Nec_0045 続いて中川住宅に向かう。こちらは昭和47年から50年にかけて建設された住宅で3街区7棟に分けて、全947戸が並ぶ大規模団地だ。中でも北東角にある2棟はツインコリダー形式で、中庭は自転車置場等になっている。ツインコリダー棟の西には南北軸住棟、さらに南側に南面住棟があって、広いオープンスペースを囲んでいる。また別の街区にはL字型2棟で四角に囲んだものや、鋭角L字住棟を2棟並べた街区もあり、バラエティに富んでいる。この結果、伸び伸びとしたオープンスペースと変化のある景観が見られる。
 ツインコリダーと言えば、2対のツインコリダーを北側だけ斜めにつないで「介」の字状になった高御堂住宅(一宮市)もあり、またスターハウス型の住棟も平針住宅(天白区)や松ヶ丘住宅(瀬戸市)などに残っている。
Nec_0041
 愛知県営住宅は、バリアフリーの観点から昭和40年代に建設された中層階段室型住棟が並ぶ団地を優先的に、順次建替えが進められている。ツインコリダー型はエレベーターも設置された高層住棟が多いが、スターハウス型は中層階段室型なので、いつまでこのままの形で残るかは定かでない。

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2011年9月14日 (水)

サンコート砂田橋とジョイフル砂田橋

 サンコート砂田橋は、愛知県住宅供給公社が昭和30年前後に建設された公社住宅の建替えとして進めてきた事業だが、今年の春にジョイフル砂田橋という住宅・福祉複合施設がオープンし、10年以上かけて進められてきた住宅団地再生プロジェクトがようやく完成した。
Dsc01589 中層の賃貸住宅が並ぶ住宅団地から、一般賃貸住宅はもちろん、高齢者向け優良賃貸住宅、商業施設、医療施設、さらに福祉施設と様々な機能が集積する地区へと大きく変貌した。ぜひ完成形を関係者の話を聞きつつ見たいと思い、都市住宅学会中部支部公共住宅部会という場を借りて見学会を企画し参加してきた。関係者の皆様、私のわがままを聞いていただき、どうもありがとうございました。
 最初にサンコート砂田橋の集会所に集まり、プロジェクトの全体計画と経緯について伺った。従前の住宅団地「旧・大幸住宅」は、昭和29~33年度に建設された公社住宅18棟486戸の住宅団地だった。専用面積は35~45m2。用途廃止直前の家賃は13,300~23,900円。
Dsc01574 敷地南側の民有地と一体的に建替え、敷地の有効利用を図る大幸地区住宅市街地総合整備事業に取りかかったのが平成6年度。民有地の先行取得を行い、その区画に公社住宅を建設。以降順次、既存住棟を取り壊しつつ、建替えが進められていった。公社住宅については、「安心」「安全」「環境」の3つのテーマを掲げ、単身世帯からファミリー世帯まで多様な間取りの一般公社住宅が227戸、高齢者抜け優良賃貸住宅が130戸の計357戸が建設された。
 環境への配慮として、IBECの環境共生住宅の認定を取得。ビオトープなどが設置されている。地震対策としては免震工法を採用。また、団地内に高齢者等支援施設や子育て支援施設を整備し、NPO法人等に貸与して生活支援機能の導入を図った。
Dsc01591 また、大きな交差点に面する角地部分には、複合商業施設を誘致。事業用定期借地契約により、(㈱)マックスバリュー中部と契約。スーパーマーケット、書店、家電量販店などからなる商業施設が平成18年にオープンした。さらにその隣接地には、平成20年に循環器系の医療施設「名古屋ハートセンター」がオープン。これも同様に事業用定期借地契約により誘致した。これらは総合評価方式による一般公募で決定している。
 そして今回、見学した住宅・福祉複合ゾーンは、事業前の段階で区域の一部が県所有地(県職員住宅跡地)となっていたが、公社が購入。一体として、総合評価方式による一般公募を実施。こちらは52年間の一般定期借地方式により契約している。公募にあたっての条件として、福祉施設に加え、住宅を100戸以上導入することを条件としており、これらを満たす応募2件のうちから、借地料や計画内容を勘案の上、社会福祉法人サンライフに決定した。住宅の導入と戸数を条件としたことについては、住宅市街地総合整備事業による計画を満たす必要があったためとのこと。
Dsc01590 完成した施設は、1階にリハビリクリニックとデイケアセンター(60人)、2階に小規模多機能型居宅介護施設(25人)と地域密着型特別養護老人ホーム(20床)が入り、3階から上は2棟に分かれる。西棟の2~4階には高齢者向け優良賃貸住宅52戸、5~8階には住宅型有料老人ホーム38戸。東棟の2~6階にはファミリー向け賃貸住宅47戸、7・8階は女性専用ワンルームマンションとなっている。また幹線道路に面する西棟1階には、和食レストラン、カフェ、イタリアンレストランと美容院が入っている。これらの商業施設は、(社福)サンライフがレンタル貸し、また賃貸住宅63戸については仲介・管理を(株)ニッショーに委託している。
 こうした全体概要を伺った後、まず、住宅型有料老人ホームから見学。オープンから半年弱、かなり好評で既に空室は3室のみとなっている。眺望のよい角の空部屋を見学。部屋の広さは77.87m2。家賃は192,000円。他に管理費・共益費40,000円(二人の場合は60,000円)を徴収。かなり高額という気がするが、他の部屋もだいたい家賃15~6万円程度。これで38戸がほぼ完売というのはすごい。地下鉄駅から近いことなど利便性が高く評価されているのだろう。
Dsc01577 室内には、赤外線方式のリズムセンサーやナースコールが設置され、万一の際に相談員等が駆けつけるとともに、ナースも配属されている。各階にはゆとりのあるパブリックスペースが設けられ、ナゴヤドームや矢田川が一望できる眺望が確保されている。また、1階のレストランは1割引で利用でき、満員の場合も優先利用できる他、お月見等のイベント企画も行われている。
 入居者は65~100歳までで女性単身者が多い。7・8割は従前名古屋市内居住。北海道からの転居者もいるが、市内に住む子供世帯を頼っての入居が多いとのこと。ちなみに、介護が必要になった入居者に対する施設内の福祉サービスの優先的な提供や転居は、定員等の関係で困難なこともあるが、相談員がサンライフの関係施設等と連絡を取り合い、適切な対応をするつもりとのことだった。
Dsc01582 続いて階下の高齢者向け優良賃貸住宅に向かう。こちらは名古屋市の家賃補助があり、契約家賃100,100~155,800円から最大42,800円まで減額される。間取りは1K又は1LDKで広くはないが、リズムセンサー、ナースコールに加え、生活相談員が配備されている。こちらも光庭に面してソファが設置され、当日も各階でおばあさん同士で談笑する姿が見られた。今はまだ自立した元気な方ばかりだが、将来に備え、配食用のエレベータや生活支援準備室が配置されている。
 2階は地域密着型特別養護老人ホームと小規模多機能型居宅介護施設である。前者は10人のユニットが2つ。浴室をはさんで配置されており、当日は3名ほどの利用者が共同生活室で寛いでおられた。確か全て満室と言っていたような気がする。小規模多機能型居宅介護施設は定員25名。デイルームを囲んで浴室や宿泊室が並んでいる。現在契約者20名のうち、16名が上階の老人ホーム・高優賃の入居者だと言う。
 1階のリハビリクリニック(内科・整形外科・リハビリ科)は休診中で、デイケアセンターだけを見学。デイケアは要介護者のうち、リハビリを要し、ホームヘルパー等は不要な方を対象にする施設で、ここでは定員60人を確保。現在30名で運営しており、理学療法士3名を配備している。
Dsc01594 残念ながら賃貸住宅等は見学できなかったが、募集後すぐに満室となり、既に退去・入居などの回転もあると言う。一般住宅は専用面積56.8~70.84m2の2LDKで家賃10.9~12.5万円。女性専用ワンルームマンションは専用面積26.89~30.8m2の1Kで家賃5.6~6.1万円。ちなみに住戸は必ずしも南面していない。東向きや西向き住戸もあるが、立地を考えれば需要は十分あるようだ。
 ジョイフル砂田橋を見学後、街区をぐるっと一回りした。複合商業施設のマックスバリューはよく賑わっている。今は24時間営業としているが、周辺対策として、開業直後は20時までとし、3ヶ月毎に次第に営業時間を延ばすとともに、駐車場出入口の改善等を行ったそうだ。循環器系医療機関「名古屋ハートセンター」もよく賑わっているということだが、当日は既に営業時間外で利用状況等は確認できなかった。
Dsc01599 サンコート砂田橋のビオトープは手入れが行き届いているとは言い難い。菜園も利用されている区画もあり、雑草が生い茂っている区画もある。立体駐車場等に設置された壁面緑化も、ツタがかなり伸びているところもあるが、ほとんど生長していない場所もある。生活支援施設や管理事務所の屋上緑化はコケ類・ハーブ類ともよく繁茂している。
 全体見学が終わった後で、改めて質疑応答と意見交換を行ったが、特に批判的な意見などはなかった。事業着手当初からすべての用途や利用方法を決めていたわけではなく、段階的に土地利用を検討し、民有地や県有地の買収、総合評価方式による一般公募や事業用定期借地契約などを行ってきている。こうした方法も含めて、トラブルなく、地域に貢献する住宅団地再生が可能となった。名古屋圏の住宅プロジェクトはなかなか首都圏の研究者等の目には留まらないことが多いが、実質的に意味のある再生事例ではないかと思う。
Dsc01602
■参考
「住まいづくり・あれこれ●環境共生住宅 サンコート砂田橋」


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2011年9月 6日 (火)

介護支援住宅モデルハウス見学

 先日、トヨタホームのスマートハウスを見学したのに続いて、今度はイワクラゴールデンホームの介護支援住宅モデルハウスを見学してきた。瀬戸市やまて坂のUR開発団地内の一画43戸の分譲住宅のうち、1戸を介護支援住宅モデルハウスとして公開しているもので、先月25日から完成見学会・分譲申込受付を始めている(現時点で既に売れ切れているのかどうかは不明)。
 モデルハウスという位置付けなので、設備や設計の工夫を目一杯盛り込んでおり、ここまでの設備はいらないというものもあるが、将来的な対応可能性という観点から見てもなかなか興味深かった。
 玄関脇の長々としたスロープは図面で見るほどには意外に気にならない。玄関ドアは自動開閉式の3枚引き戸(袖付2枚引)。玄関は広く、室内床高まで上がる折り返しスロープが付いているが少し仰々しい。上がり口には収納兼用のベンチが設置されている。
 玄関右手にLDKが伸びている。この入り口も自動開閉式の引き戸。居間から屋外へのはき出し窓には大きな取っ手が付いて、開閉も軽い。LIXILの製品だそうだが、もっとPRすれば一般住戸でも売れるのではないか。
 キッチンは音声で使用状況等を知らせるガイダンス機能付きセンサーガスコンロ。オール電化対応も可能だが、必ずしもオール電化を望む声が高いということはないとおっしゃっていた。最近のオール電化ブームは実は若い世代が中心なんだろうか。
 2階へ上がる階段には段ごとにLEDのスポット灯が付いて足元を照らす。2階に身障者を想定した寝室を設置したのは、モデルハウスだからだろう。介護ベッドの横に介護リフトが据えられ、身体をベルトで持ち上げ、下穿きの着替えも可能だ。同様のリフトは浴室にも付けられ、ベッドで専用の車椅子に移し、浴室でリフトで吊り上げ、入浴させることができる。
 浴室には全身シャワー、トイレには両側アームレスト付き便器、寝室にはミニキッチンも設置されている。2階からの移動はホームエレベータも設置されている。積載重量200kgまで対応で、電動車イスも楽々だ。ホームエレベータへの関心も最近は高いと言う。将来の設置スペースということであれば、当面、物入れにしておくこともできる。
 モデルハウスということもあり、設備が過剰なほど設置されているが、実際には必要に応じ設置すればいいだろう。現在が健常であればどこまで設置しておく必要があるか、判断が難しいが、ゆとりがあれば準備はし過ぎて困ることはない。
 介護支援住宅という商品コンセプトには、企業としての将来コンセプトが窺われる。第2次ベビーブーム世代の住宅取得が一段落を迎えた後には、新規住宅取得階層は激減が予測される。多くのハウスメーカーではリフォーム部門を充実させるなどの取組みが見られるが、イワクラゴールデンホームでは、団塊世代の建替ニーズに的を絞った販売戦略を考えているということだろうか。
 30代に住宅取得した中高齢世帯が退職期を迎えるとともに、住宅も築30年を迎えつつある。リフォームもいいだろうが、退職金を充当し、いっそ建替えを考える世帯もあるだろう。ハウスメーカーが新築需要をいかに喚起するかと考えるときに、団塊世代の建替え需要は大きなターゲットだろうし、介護支援住宅というコンセプトは企業戦略として意味があるのだろう。

●参考
「イワクラゴールデンホーム:介護支援住宅」

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2011年8月13日 (土)

トヨタホームのスマートハウス

Img_0025 高校時代の友人がトヨタホームの役員に就任した縁もあって、トヨタホームが豊田市で実施している実証実験住宅を見学する機会を得た。経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証」の採択地区の一つとして、豊田市を中心に関連企業等で実施する「低炭素都市構築実証プロジェクト」は、2010年度から14年度までの5年間、トヨタホームが分譲販売する実証住宅において入居者のエネルギー利用状況等を計測し最適化を図るとともに、PHV(プラグ・イン・ハイブリッド車)、EV(電気自動車)等を導入して低炭素交通システムの構築を目指すものだ。
 豊田市では今年度から、名鉄新豊田駅近くの低炭素社会モデル地区でモデルルームやパビリオンの整備を始めるが、トヨタホームの実証住宅は既に豊田市東山町と高橋町の2地区で6月から分譲住宅の販売を開始し、9月には入居が始まる予定となっている。豊田東山地区の一画に6月末、スマートハウスのモデル棟が完成しており、今回、この住宅を見学させてもらった。
Img_0019 スマートハウスには創エネ・蓄エネ・省エネ・の3つの視点から各種の設備が設置されている。「創エネ」の観点からは、家庭用燃料電池システム「エネファーム」と太陽光発電システムが設置されている。こうして作られた電力は、蓄電池に蓄えられる。温水の形で蓄えるエコキュートや充電スタンドを通して電気のやり取りを行うPHVの蓄電池も「蓄エネ」の一つに挙げられている。さらに「省エネ」では、LED照明などの家電機器における省エネ仕様に加え、家電コントローラにより消費電力の表示等を行い、省エネアドバイスを行う。
Img_0003_2 これらの中核として全体をコントロールしているのがHEMSと呼ばれるマネジメントシステムで、住宅全体のエネルギーの状態を把握・予測し、創エネ・蓄エネの最適化を行う。また各戸のエネルギー状況は地区レベルで集積・把握し、例えば太陽光発電量に応じたエコポイントの発行などにより、生活圏全体での行動最適化をめざすこととしている。さらに、FC(燃料電池)バスやEV、PHVの積極的な導入により低炭素交通システムの構築もめざす。
Img_0021 地域全体の取組み等については、まだ構想段階だが、住宅内の設備については一部の家電設備を除き一揃い設置されていた。中でもHEMSのコントロールパネルでは、プリウスのナビパネルさながら、発電系や蓄電系の電気のやり取りが表示されたり、部屋別の電気使用状況や水道光熱費の推移など多様なモードへ切り替えることができ、見ていて楽しい。また、電動ルーバーシャッターやキーレスドアなどの最新式の設備も設置されている。
 屋外に廻ると玄関脇の駐車場にはプリウスが停められ、充電スタンドと接続している。蓄電池は鉛蓄電池で意外に大きい。リチウム蓄電池の方が小型化できるそうだが、PHVとの電気のやり取りを行うとなると、PHVの蓄電池も含めて、耐久性が大きな検討課題の一つだと言っていた。
Img_0023 さらに雨水タンクやエネファーム、エコキュートが並べて設置されている。これはモデル住宅だからで、実際の分譲住宅ではエネファーム設置住宅は少なく、オール電化住宅が多いようだ。個人的には、先日の大震災を考えると、電気偏重ではないかと思うが、オール電化に対する一般購入者の支持はまだ高いのだろうか。
 今回、2団地で全67戸の分譲を予定している。6月に販売した東山地区第1期14戸はあっという間に売り切れた。今後、来年にかけて67区画全ての分譲を行い、2014年にかけて入居者に協力を依頼し実証実験を実施する。全国4ヶ所のモデル地区の中でも、PHV・EVも組み込んだ実証実験という点が特徴的なのではないか。実現可能性を考えると、住宅単体の市場化はともかくとして、地域システムとしては課題が大きい。コミュニティレベルの政府がこれを運営するのか、それとも市場ベースで実現するのか。いずれにしても遠い未来の話のような気がする。

●参考
 豊田市低炭素社会システム実証推進協議会
 トヨタすまいるライフ・スマートコミュニティ

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2011年2月 2日 (水)

有松の古民家再生プロジェクト

 旧東海道に面した有松は、江戸末期の町家がよく残り、歴史的な町並みとなっている。名鉄有松駅から街道を西へしばらく行ったところに、目的の中升竹田邸がある。いや、あったというべきか。

Dsc01252_2 江戸末期と言われる旧町家は、かつては有松絞り関係の商家だったが、その後老朽化し空き家となっていた。所有者は広大な土地の活用を図るため、当初は取り壊してアパート経営を考えたらしい。しかし、ぜひ保存してほしいという周囲の声もあり、また今話題の河村市長(前?)の声掛かりもあって、保存しつつ活用していく方策を検討することとなった。

 今回、現地を案内していただいたのは、所有者から建物管理を受託している()クルーズの方。保存の期待は高かったものの実際に調査をしてみるとかなり老朽化しており、使える材を使用しつつ、従来の外観を復元するという方針で再生することとなった。

Dsc01260 街道に面した部分は店舗・飲食店等の商業的な用途も検討したが、観光者数もそれほど多くないこと、また周辺地域の高齢者人口が多いことから高齢者デイサービスセンターとして賃貸することとなった。またその背後には、和風黒塗りの外観を持つ木造2階建ての高齢者向け優良賃貸住宅を建設。敷地の南には高い楠と緑地が残り、歴史的な町並みに溶け込んだゆったりとした住環境が実現している。

 再生・復元に当たっては、名古屋市が開府400年記念事業として「有松まちなみ保存ファンド」を設置。保存に係る経費660万円を目標に募金を行った。有松まちづくりの会が発行する「有松かわら版 第6号」によれば670万円余集まり、残りは名古屋都市センターの「まちづくり基金」に寄付されたという。

Dsc01257  外観はきれいに保存されている。室内に入ると、思ったほどには古材が使用されていないことに少しがっかりする。大梁は45本、古材が用いられているが、1本を除き、途中で継いである。表に面して筋交いが設けられており、現行基準に適合させるためには仕方ない。しかし小屋組はあらわしとなっており、古家具なども入れられ、古民家の中という雰囲気は十分に伝わる。高齢者にとっては懐かしい気分がするのではないか。

 高齢者向け優良賃貸住宅は2階建て8戸の小さなものである。1偕に4戸。いずれも引き戸で入る。2偕に上がる階段が2ヶ所。これも1偕住戸の玄関引き戸に並んで設けられた引き戸を開けて入る。

Dsc01266  室内は1K、約33㎡。居室の壁には、緊急通報ボタンと生活リズムセンサー用の外出・在宅ボタンが並んでいる。つばめタクシーと契約し、緊急時には運転手が駆けつけることになっている。ただし有料3,150円。現在の入居者は誰も利用していいないそうだ。家賃は65,000円だが、収入に応じて市の補助が最大23,500円受けられる仕組みになっている。他に共益費7,000円が必要。駐車場も各戸1台ずつ用意されているが、利用者はほとんどいない。現在8戸のうち4戸が入室。1戸は入居後すぐに体調が悪化して退去されたそうだ。

Dsc01264_2  昨年の7月から入居を開始したが、思ったほど入居が進んでいない。()クルーズによると、高齢者向け優良賃貸住宅制度の仕組みとして、仲介業者への手数料等が認められていないことから、募集情報が高齢者にうまく伝わっていかないことを最大の原因として挙げていた。その他、入居資格があり、毎年、収入証明が必要になること、礼金が取れないことなど制度に伴う隘路はよく聞くところだ。

 入居者は近在の方や有松に縁のある方が多いと言う。デイサービスセンターがオープンすると、口コミでもっと広まるだろうか。表棟と住宅棟の間に広がる駐車場に面してベンチが置かれている。この空間で住宅居住者とデイサービス利用者の交流が始まれば、施設全体が生きてくるだろう。

●参考
フォトアルバム 「有松の古民家再生プロジェクト」

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2010年7月27日 (火)

「生協のんびり村」の暮らしと活動

 東海市と言えば、「デフレの正体」で藻谷浩介氏が、太田川駅前を「好景気にも関わらず閑散な駅前の代表」として取り上げていたが、「生協のんびり村」はその太田川駅から河和線で2駅目、南加木屋駅から歩いて5分ほどのところにある。南加木屋駅の東から北に広がる田園地帯は、2006年まで区画整理予定地に指定され、建築制限により緑豊かな環境が守られてきた。区画整理が中止となり、地主さんから土地提供の話がやってきたとのこと。

Dsc00983_3  事業主体は「南医療生活協同組合」。全国に115ある医療生協の一つで、愛知県内には名古屋を中心に、北医療生協、みなと医療生協と、この南医療生協の3組合が設立されている。南医療生協は伊勢湾台風(1959年)後の救援活動から出発し、1961年に設立。以後、名古屋市南部から知多半島一帯、さらに東は岡崎市まで活動を拡げ、現在11ブロック、75支部、725班で構成されている。組合員約63,000人。出資総額約25億円。

 南医療生協と言えば、この3月、緑区大高に「総合病院 南生協病院」が移転・新築され、その立派な施設ぶりが注目をされたところだが、小規模多機能施設やグループホーム、多世代共生住宅で構成される複合型介護施設としては、20056年、名古屋市南区柴田に「生協ゆうゆう村」がオープンしており、この「生協のんびり村」は南医療生協としては二つ目の施設となる。

Dsc00985_2  東海市ブロックは1市で8支部1ブロックを組織しており、知多市以南の7市町村で9支部1ブロックを形成していることに比べると、ある程度、活動が活発なエリアと言える。これは、東海市が新日鐵の名古屋製鉄所やトヨタの子会社である愛知製鋼などが立地する企業城下町で、転勤族も多く、社宅や雇用促進住宅なども多く存在する土地柄が影響していると思われる。一方で、地域とは疎遠な住民も多く、「地域との共同」という点ではかなり苦労しており、この「生協のんびり村」づくりの過程で、組合員の増強・拡大を図ってきた。

 今回、説明・案内をしていただいたのは、非常勤・副理事長(なんと無給!)の山口さんと施設管理者の水上さん、竹馬さん。特に設立までの経緯については、近くに住むと言う山口さんが丁寧に楽しく説明をしていただいた。

Dsc00987  20056月に、東海市ブロックに百人会議「ひやく会」を設置。組合員の意見を聞きながら構想づくりを始める。「107プラン」と称する運動を展開。これは当時5支部を10支部に拡大するとともに、組合員を5,200人から7,000人に、そして2年間で6,000万円の増資を募るという計画。このため、夕焼け訪問等の活動を展開し、組合員を募るとともに、施設のPRを実施。「流しソーメンまつり」で1,000万円以上の出資を集め、20084月の棟上げ式では地域住民300人が集まる中で盛大に餅まきを開催。秋には一部施設を開所し、翌20094月には全体が完成。地域住民の参加も得て、竣工イベントを開催した。

Dsc00988_2  施設は、9人収容のグループホーム「ほんわか」、定員25名・1日利用者15名の小規模多機能ホーム「おさぼり」、そして18室からなる多世代共生住宅「あいあい長屋」と地域交流館「おひまち」、喫茶「ちゃら」から成る。グループホーム「ほんわか」は別棟の木造平屋建て。残りは一体の木造で、多世代共生住宅「あいあい長屋」部分が2階建てになっている。木造軸組構法で、地域交流館「おひまち」の天井には大きな丸太梁が現しとなっており、その他の部屋も内装に木材が積極的に使用されている。整備費は約3億円。うち東海市から地域介護交付金が認知症高齢者グループホームと小規模多機能型居宅介護施設の2施設に対して計3,000万円交付されている。また、組合員がウッドデッキの組立・塗装や木部のワックスがけ等に参加するなどの協力もあった。

Dsc00992  グループホーム「ほんわか」は利用料約18万円で、東海市では最も高額とのこと。現在、待機者は23名。入居者はほとんどが近在の人で、たいてい週に1回は家族が訪問に訪れるという。また、小規模多機能ホーム「おさぼり」もほとんど定員一杯の利用状況とのこと。みんなで喫茶店や居酒屋に行くなど、自由で気ままな暮らしを心掛けているそうで、今回の見学の際も、説明する山口さんたちの横に入所者がやってきて、「みなさんようこそいらっしゃいました」と挨拶をされたのには驚いた。

 一方、多世代共生住宅「あいあい長屋」のパンフレットには、「若い世代も入居できます」と書かれているが、残念ながらそういう入居者はおらず、まだ2室ほど空いている状況。1K6.5万円の家賃(他に光熱費)はかなり高額。食事サービスの利用者は2/3程度とのこと。募集はもっぱら口コミで、あまり満室にこだわってはいないようだが、「今後も同種の住宅を建設するか」という問いには、「もう少し状況を見て」と答えていた。

 また、地域交流館「おひまち」と喫茶「ちゃら」の利用率もイマイチのようで、現在、地域へのPR活動に努めているとのこと。無料で使える地域の集会所や公民館がある中では、これらの施設はなかなか難しい。

Dsc00994  同種の施設として名古屋近辺では「ゴジカラ村」が有名だ。「ぼちぼち長屋」という多世代共生住宅もある。「ゴジカラ村との違いについて、どう考えているか」という質問に対して、「ゴジカラ村は、吉田一平さんの強烈な個性と大規模地主という特性に支えられている。それに比べれば、医療生協は真面目です」と答えられた。ゴジカラ村が不真面目というのではないが、誰でもできるものではない。南医療生協の取組も誰でもどこでもできるというものではなく、南医療生協という強力なバックがあってこそ成立していると言えるが、こうした取組や形態が一般的になる可能性を秘めているとも思う。

 東海市からは、「交付金を支給するので、次の施設も検討してください」と言われているそうだが、その前にもっと地域に根ざすこと、地域交流施設が軌道に乗ることを真っ先に考えているようだ。利用料が高いのは、木造で作ったゆえの償還期間の問題もあった。建築的な興味もあるが、「生協のんびり村」が継続して運営され、第3・第4の「生協○○村」がさらに進化して誕生することを期待したい。

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2010年2月26日 (金)

シルバーピアという仕組み

 東京都営住宅のシルバーピアを見学してきた。そもそも見学に行くまでシルバーピアとは何かがわかっていなかった。シルバーハウジングに関する調査研究の一環として行ったもので、シルバーハウジングとは、生活援助員(ライフサポートアドバイザー=LSA)による見守り・安否確認等の福祉サービスが付いた住宅のこと。東京都はLSAを住み込みとしているとは聞いていたが、この住み込みの生活協力員(「生活援助員」と微妙に異なる)のことを東京都ではワーデンと呼ぶ。ワーデンがいる高齢者向け住宅のことを、東京都ではシルバーピアと呼んでいる。
6589 今回見学してわかったことは、シルバーピアはシルバーハウジングに先駆けて東京都が取り組んだ高齢者向け住宅であるということ。今回は港区の港南四丁目第3アパートを訪問したが、港区ではシルバーハウジング以前に、区が独自で取り組んだシルバーピア(高齢者住宅)が4住宅あり、その後、都営住宅の建替に併せて、都がワーデン住戸と団らん室を設置することとなり、それ以降は都営住宅内でシルバーピアを整備している(他にUR住宅が1棟)。
 他の道府県では、住み込み型はほとんどなく、通勤型、訪問型が主となっている。通勤型は住宅内の事務室に駐在して福祉サービスを行うもの。訪問型はデイサービス等に駐在し、福祉サービスを訪問して行うものを言う。
 介護保険制度導入とその後の制度改正により、生活援助員派遣事業は地域支援事業の中で、他の地域見守り事業(配食サービス等)や福祉用具・住宅改修支援事業等と一括して介護給付費の2%を上限に国から助成を受ける仕組みとなった。このため、他の事業需要も大きいことから、生活援助員派遣事業に対する市町村福祉部局の予算計上は年々厳しくなってきていると聞いている。
 こうした状況を踏まえ、今後のシルバーハウジングのあり方を考えたいというのが今回の調査目的の一つだが、シルバーピアにおける福祉サービスというのは私がこれまで理解していたシルバーハウジングのそれとは違う次元のものだった。
 見学後に話し合った見学者の一人は、「東京都は急増する高齢者に対して高齢者住宅を供給することが第一の目的であり、高齢者ばかりの住宅に若いワーデンが住み込み、見守りをすることを理想とした」という意見があった。シルバーハウジングは、ワーデンが果たしている言葉にできない多くの役割の中で、明示できる個別のサービスだけを抜き出し、サービス提供者としての生活援助員を配置している。こうした「人が先か、サービスが先か」という視点は、この種の高齢者住宅にとって決定的な違いを生んでいると思われる。
6597 そう、ワーデンは極論すれば何もしていない。「良き隣人」である。年に4回の書類の手渡しと1回の機器点検を除いては、義務的に入居者と会う必要性はない。しかし彼女らは入居者全員(この住宅の場合は50名)の顔を覚えており、団らん室に常駐して窓から見える入居者の姿を確認し、様子がおかしければ訪問して必要な世話を焼く。日頃から包括支援センターとは連絡を取り、介護状況等を熟知するが、いらぬお節介はしない。
 各住戸には押しボタン式の緊急通報システムとリズムセンサーによる安否確認システムが整備されており、日中は団らん室に連絡が入り、ワーデンが駆けつける。夜間は原則として警備保障会社で対応するが、この住宅の場合は午後10時から朝の6時まではワーデン宅に連絡が入るようにしているそうで、「良き隣人」として十分以上の役割を果たしている。
 団らん室は、シルバーピア入居者であればいつでも利用可能で、ほとんど毎日、麻雀や趣味の教室などに利用されている。入居者がメンバーに一人でもいればOKで、一般住戸に住む高齢者も一緒に利用している。ワーデンから特にイベントを仕掛けることはない。
 ここも他県のシルバーハウジングと違うところで、神戸市などコレクティブ住宅ではかなり積極的に定期的なイベントを実施しているそうだが、その他ではイベント参加者が少なく次第に行われなくなり、団らん室があまり使われていない例も多い。
 東京都以外の一般的なシルバーハウジングでは、生活援助員の業務は福祉サービスの提供と捉えられており、その業務内容と量が定められている。ところがその入居者は自立生活のできる高齢者を前提としているため、頻繁な安否確認を拒否する高齢者や、逆に過剰な家事サービスを要求する高齢者などがいて、設定している福祉サービスとの間に齟齬を来たすことが間々見られる。また生活援助員自身がその齟齬に耐えきれずやめていく人も多いと聞く。
 シルバーピアの場合は「良き隣人」として一緒に生活していることが求められている。業務内容は決められているが、その頻度や量は定めていない。この結果、入居者の福祉サービス要求との狭間で悩むワーデンはいるとのことだが、過剰なサービスを入居者に強要することによるトラブルはない。安否確認は必要に応じて行われ、定期的に行うことはない。人間関係として自然である。
 ただし、住み込みのワーデンの確保は大変なようである。都では住み込み型以外も認めるよう要綱の改訂をしており、今後は通勤型のシルバーピアも増えてくるのかもしれない。しかしその時、シルバーピアの良さはどうなるだろうか。日中だけでも常駐していれば十分機能は果たすのか。これだけの人件費(委託費)を確保できることがそもそも東京都内でしかできないのかもしれないが・・・。

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